言葉を疑う人
これは、谷川俊太郎さんへの追悼文のタイトルです。(『生きる言葉』俵万智著 新潮新書)
そもそも言葉と世界とは、一対一で対応していないし、絶対的にズレがある。そのことを呑気に忘れて、私たちは何かを書いたつもりになっている。いや、呑気に忘れないと怖くて言葉なんかつかえない。ともかくズレはズレとして、いかにズレを小さくするかがポイントだとしたら、谷川俊太郎さんほど高い精度で言葉を扱える人は稀有だろう。一番無自覚でも許される人(現に言葉がつかえてしまっているという点で)が、誰よりも自覚的だということに胸を打たれた。逆に言えば、とことん疑っているからこそ生まれる精度なのだろう。(p226より)
私は、谷川さんが「言葉を信用していない。言葉でうそをつくから」とも「声には力がある」とも話しておられるのを、聞いたことがあります。
「言葉の力を育てる小学校教師として心しなくては」と、私は思うのですが……。
東京 T.K