8月の話題 1

マスいっぱいに、ゆっくり、濃い字で

 この頃では小学校でもずいぶんIT化が進み、低学年からタブレットを使って授業するようです。世の流れに逆らうことはできませんが、孫(小6、小2)を見ているとこれで良いのだろうかとしばし考えます。
 いずみ会では全ての授業で、〈四 かく〉に入る前に「マスいっぱいに、ゆっくり、濃い字で書きましょう。」と指導をします。毎日、こうして書いていると、いつの間にかしっかりした字が書けるようになります。何気ない一言ですが、非常に大きな役割を果しているのだと、孫の字を見る度に思います。
 私だけでなく現場の先生方からも「力を入れて書けないので薄い字になる。」「書き順が違っているので、字形が整わない。」等の声を聞きます。驚いたのは、保護者の中には「いちいち細かいことを言わないでほしい。」等と抗議をする方もあるとのこと。世の中の風潮が「おもしろく、楽しく」にあるのも一因でしょうか。苦労してやり遂げること、努力することなどの大切さが低く受け取られているのでは。
 楽に手に入るものはすぐ忘れてしまいます。自分の体に刻んだことはよく覚えているものです。教式の核は〈四 かく〉です。それに関わる想い出です。
 教員生活6年目に全校70人余りの山奥の小さな学校から全校1200人余りの大規模校に転勤し、1年生40人を担任しました。教式のおかげで安心して授業に取り組むことができました。書くことを毎日していますから、子どもたちは字が上手に書けるようになるのはもちろんですが、健康状態や精神状態もわかります。「今日の字はいつもと違うから具合が悪いのでは…」と連絡して、親御さんが驚かれたことがあります。教式で教えていなかったら、見逃していたと思った出来事でした。教式に助けられたことは度々です。
        島根  M.N

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