10月の話題 2

教材を読む その2

安達孝之介先生の感想文 第74回国語教壇修養会(昭和52.8茨城県大宮町立大宮小)の筆録より

   教壇自省(2年 スイミー)
                                
○ 素手で向かう
 7月の終業式の後、2年生の先生に、夏の会に「スイミー」3時間戴いているので、教科書を貸してくれるようにお願いしたら、2年生の先生は、
「大変御苦労様です。」
と言って、赤ずりの指導書を貸してくれました。
「指導書はいらないから、教科書を貸してください。」
と言いました。
「どうやって指導するのですか。」
と言うので、
「指導書なしで、素手で向かいます。」
と答えました。
 自分一人、頼るものなし、断崖絶壁のところで、考え抜く、行じ抜く、いかに小さい力でも、自分の力以外に頼るものなし。そういう気持ちで答えました。
 考えてみれば、随分厳しいものかもわかりません。
○ 読み抜く
 教材を毎朝バスの中で読みました。不安なところがなくなるまで読みました。それから、全文書写してみました。3時間分の大ざっぱな目安が立ちました。一次の手引きが決まりました。二とく、六とくは、まだ確信がありませんでした。とにかく自分のものにするように読むだけでした。

 安達先生40代半ばのご教壇です。
 自分一人、頼るものなく素手で立ち向かう。自分のものにするまで、とにかく読み抜くという強い気持ちで授業に立ち向かわれたことが感じられます。
 学校に突然の参観者が来ると、安達先生の学級を見せたという伝説を聞いたことがあります。常に案を立てて授業をされていたからだということでした。
 「ちいちゃんのかげおくり」「たぬきのいとぐるま」「ヒロシマのうた」など、数々の名教壇を踏まれた背景に、若い頃からの厳しい修行があったことを思わずにはいられません。                          

     岩手 Masa.K