特別支援教育と芦田教式(単純化と区分の働き)
ここまで芦田教式と発達障害について書いてまいりました。今日は、知的障害との関連について書きたいと思います。
芦田教式は、一次指導で全体像を概観させます。ここでは、横一線を書き、段落に区画し、できるだけ一問で貫いた 言葉を各区画毎に探し、文章の構造を理解させます。この問いの工夫を大事にします。
具体例を挙げますと、私の師である笠原先生の授業に「森林のおくりもの」があります。先生は「各段落の森林からのおくりものを漢字一つで表してごらん」という問いを出し、整理なさいました。全体を『木(材)、紙、火』『水、土』と一覧できるようにまとめました。そして、前の『 』は、「切られた木」➾木(木材として)、紙(くだかれて紙となって)、火(燃やされ火となって)、後の『 』は、「生きてる木」そのままで➾水(水をたくわえ)、土(根が土を抱え、良い土を作る)と整理しました。
二つの『 』の間には次のつなぎの文がありました。「木材と、紙と、火と──。それだけでも、何とすばらしいおくりものでしょう。けれども、それらは、森林の大きな働きからすれば、まだほんの一部にすぎません。森林はもっと別のおくりものをとどけてくれているからです。」
この文は、さらっと読むと前者と後者をつなぐ程度のことに見えますが、よく読むと、前者と後者の関係が書かれています。木材と紙、火、それだけでもすばらしい。しかし、それはほんの一部、もっと大きな働きがあるのです。というわけです。
先生は後者の価値、一日も休むことなくおくり続けることの大切さを解かれました。かなりの長文で読み取りの難しい文章です。先生は木の働きを一覧できるようにし、「木材として」「生きる木として」の二つに区分しました。この働きを単純化すること、二つに区分することで文章全体の構造が明らかになり理解が容易になります。
全体像の理解は学習の基盤ですから、ここを助けてもらうと、意欲を持って学習に取り組めると言えるのではないでしょうか。特に力の弱いお子さんには大きな助けとなります。
また、二次指導の二とくで、前時のおさらいを取り扱います。力の弱いお子さんは復習ができて、よく理解できます。分かると学習が楽しくなります。そうなると喜んで学習に取り組むようになります。またおさらいは、視点を変えた取り扱いなので、よく理解できているお子さんもあきません。
宮城 M.A