10月の話題 5

鈴木佑治先生の御教壇から ー 2

 今、わたしは、昭和34年度冬の会の鈴木佑治先生の御教壇筆録「さらの色」(筆録は春の会と合併号として作成される)を打ち込んでいます。
 陶工喜三右衛門(初代柿右衛門)が、夕日に映える柿の実を見て、あの赤を陶器に出したいと、赤絵の皿を焼成させるお話です。
 まず気付いたのは、昭和34年度のこの筆録から、それまでの五変化の教式が、現在の七変化の教式として記録されているということです。
 この「教式の変遷のいきさつ」については、いずみ会前指導部長安達孝之介先生がまとめておられます。(註1)
 また、筆録には、大先達の米澤徳一、高橋克義、助松太三、杉田すま、笠原昭司、佐々木秀也、安達孝之介、明田川ヨリ、の8名の先生方が感想文を書かれています。
 御教壇記録を読んで、これほどまでに教材を単純化・再構成されて取扱われておられるのかと驚きました。「さらの色」は劇教材で、16頁あります。
 第1時は、所要時間が36分と書かれています。「1よむ、を15分」で、「2とく」から「7よむ」までを21分で終えられています。
 第2時は、所要時間が35分と書かれています。「1よむ、を13分」で、「2とく」から「7よむ」までを22分で終えられています。
 第1時の「1よむ」ではト書きを声に出して読ませず、黙読による理会によって「2とく」を進めておられます。第2時ではト書きを声に出して読ませておられます。このように、「1よむ」の扱いを変えることにより、登場人物の動きをより深く理会できるようにしておられます。
 また、「4かく」では、第1時では番頭の吉助の言った言葉を書かせ、第2時では喜三右衛門のしたことを書かせ、二人の陶器にかける思いや生き方など、人間性を際立たせて扱うなど、御教壇のいたるところで御工夫をされておられます。
 大先達の感想文を読みますと、8名の方が皆それぞれ鈴木先生と喜三右衛門が重なり合い、「名人が名人の御教壇を行った。」と書かれております。
 この冬の会の帰途、鈴木先生が「やっと泉下の先生にお目にかけられるような壇が踏めた。」と、杉田先生におっしゃられたそうです。
 鈴木先生御自身も会心の御教壇と認めておられるように思いました。

 是非、このような貴重な資料が保存できますことを願っております。(註2)

註1 (復刻)「ことばと文字」 鈴木佑治先生の昭和30年8月の教壇筆録
            いずみ会刊 平成21年7月1日発行
   【解説】教式の変遷(64頁~71頁)
    ー 七変化の教式から五変化となり、また七変化の教式になったいきさつ ー
註2 いずみ会では、現在、筆録の電子化に向けた取組を進めております。

             宮城:T.S