…… 小学校の国語の授業を考える ……
「かさこじぞう」 (その4) ~ 鈴木先生のご教壇 (第一次指導) ~
昭和39年冬に行われた、青森県百石町立百石小学校での第48回国語教壇修養会における鈴木佑治先生の「かさじぞう」のご教壇(抜粋)を紹介します。
「かさこじぞう」ではなく「かさじぞう」という題目でした。
地蔵様の数は12人で笠が11個。自分の笠をかぶせ、「わしは、この手ぬぐいでたくさんだ。」と腰の手ぬぐいをかぶって帰る話でした。
今回は、第一次指導です。筆録を担当されたのは、笠原昭司先生。当時37歳でした。
第48回国語教壇修養会 於 青森県百石町立百石小学校
昭和39年12月29、30日 第一次指導(第一時)12月29日(10:10~10:50)
一 よむ
〇 区画 8区画
〇 読む 8人
1から6まで ゆっくりした落ち着いた読み。
7 男 明け方ですの読みを教えられる。弱い読み。8 女 声にはりがない。
◦ 本をおいて下さい。えらい。8人ともよい読みでしたね。
なか(内容)のことをよく考えながら、よく読んでくれましたね。
聞く方も、さすがは三年生だ。とても一生懸命聞いたね。
二 とく
〇 題 ( かさじぞう と題目板書 )
◦ 笠地蔵のお話ですね。
◦ この地蔵さんは、何で作った地蔵さんでしょう? (石で作った地蔵さん)
◦ 石で作った地蔵さんです。この地蔵さん、どこに立っているか? (とうげの上)
◦ とうげのその道ばたに、石のお地蔵さんがいくつ立っていたか。 (12)
◦ 石の地蔵さんが、道ばたに立っているのは、おかしいか、おかしくないか? (おかしい)
◦ そうかな。ちがうだろう。外に立っていなさるの、お地蔵さんの役目です。
雨の日でも風の日でも雪の日でも、どんな日でも、お地蔵さんは道ばたに立っているのだよ。
◦ その石のお地蔵さんに、笠をかぶせたのはだれ? (おじいさん)
◦ おじいさんです。どんな日に、かぶせましたか? (雪のふっている日です)
◦ あとからあとから、雪のふってくる日に、お地蔵さんに笠をかぶせてあげました。
◦ かぶせている絵のところあるでしょう。あけなさい。
◎ ひびき(絵)
◦ 笠をかぶせてあげる前には、お地蔵さんは、何をかぶっていたかな。 (雪)
◦ おじいさんが、雪をはらって、笠をかぶせてあげたの。
こう雪をはらって(動作)ここからとってかぶせ(手で笠をとる動作)また、
雪をはらって、笠をかぶせてあげたの。
◦ お地蔵さまの数だけ、笠があったかな。 (なかった)
◦ こう、かぶせていって、(順番に)何番目でとまったか? (11番目)
◦ 11番目になったら、こう(後へ手をやられて)手をやっても、笠はないのだよ。
◦ ほかのお地蔵さんは、ちゃんと笠をかぶったからよいが、たったひとりのお地蔵さんは、
やっぱり雪をいっぱいかぶっているの。おじいさんは困ってしまった。困ったなあ。
困ったとき、うまいこと考えたよ。何を考えたか? (自分の……)※声低く聞こえない。
◦ (師、この力の弱い子の答えを大きく取り上げ)ようし、よい答えだったよ。
自分のをかぶせました。そうしたら1から12番目のお地蔵さんの頭までみんなかぶったの。
◦ おじいさんが、お地蔵さんに笠をかぶせたら雪がやんだか? (やまなかった)
◦ お地蔵さんは雪がふっても平気だが、おじいさんは自分の笠もお地蔵さんにあげてしまって、
雪まみれになってしまうだろう。おじいさんは、どんな顔をして帰ったか?(よろこんで)
◦ 喜んで、にこにこして帰りました。お地蔵さんに、笠をみんなあげてしまって、自分は雪の中
をにこにこしながら帰ってきました。そういうおじいさんの話だよ。
〇 手引き
◦ おじいさんは何をしたか、みつけて書きなさい。
三 よむ
四 かく
五 よむ (指黙読) (指音読)
六 とく
◦ おじいさんが家を出るときは、せなかに何を持っていたの? (笠)
◦ いくつ持っていったのか? (11。 答を受けて黄チョークで11と板書)
◦ 11の笠を持ってでかけました。 (板書 第 6 区画 帰っていきました を指して)
家に帰った時は、笠、いくつ持って帰りましたか? (何も持って帰らない)
◦ 家を出る時は、笠を11持っていきました。帰った時は笠がゼロです。
(黄色で、帰っていきました の左わきに 0 を書かれる)
◦ もう1つなくなったものがあったでしょう。 (かぶっていた笠)
◦ 自分のかぶっていた笠もお地蔵さまにかぶせてきました。出かける時は、笠を11しょって、
頭に1つかぶって行ったのが帰りはゼロ。
◦ 11の笠は、どこにとんでいったの? (お地蔵さま)
(第3区画に書いた数字11のところから矢印を第4区画のところに書かれ)
◦ ここの一つの笠は、どこにいったの? (お地蔵さまにかぶせました)
◦ お地蔵さまにかぶせました。 (前と同様矢印をつけられる)
◦ 雪の降る中で、笠がいるのは、石のお地蔵さまか、人間のおじいさんか?(お地蔵さま)
◦ そうかな、お地蔵さまが、笠 (おじいさん)
◦ おじいさんだよ。人間のおじいさんが、いるの。
お地蔵さんは、雨がふっても風がふいても、道ばたに立っているのがお仕事。笠なんかいらな
い。笠がいるのは、人間のおじいさんだよ。それを、みんなかぶせて帰ってきた。
◦ 帰ってきた時、おじいさんはとてもよい顔をしていた。おばあさんは、どうだった?
(にこにこしていた)
◦ 笠が、さっぱりなくなって帰ってきても、おばあさんは、にこにこして迎えました。
◦ おじいさんやおばあさんは、お地蔵さまに、笠をくれるぐらい物持ちかな。
たくさん持っているのか? (持っていない)
◦ 持っていないさ。笠を作るのは、何のため? (もちを買うため)
◦ もちを買いたいから、作って売りに出かけたの。
その笠を、お地蔵さんにあげて、にこにこして帰ってきたおじいさん。そして何も持たないで
帰ってきたおじいさんを、にこにこして迎えたおばあさんを勉強します。
七 よむ 板書を読む。
鈴木先生の御教壇は、おじいさんの地蔵様への思いやりの気持ちが強く感じられます。本当に笠
が必要なのは自分なのに、我が身を顧みず、地蔵様へ笠をかぶせて帰ってくるおじいさん。それを
にこにこして迎えるおばあさん。笠原先生は、これを「若いころに亡くした我が子の姿に重ねてい
るのではないか」と読まれています。
次回は、鈴木先生の御教壇の第二次指導を紹介します。
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