令和4年1月24日(月)~1月30日(日)  第43週

…… 小学校の国語の授業を考える ……

「かさこじぞう」 (その4) ~ 鈴木先生のご教壇 (第一次指導) ~

 昭和39年冬に行われた、青森県百石町立百石小学校での第48回国語教壇修養会における鈴木佑治先生の「かさじぞう」のご教壇(抜粋)を紹介します。
かさこじぞう」ではなく「かさじぞう」という題目でした。
地蔵様の数は12人で笠が11個。自分の笠をかぶせ、「わしは、この手ぬぐいでたくさんだ。」と腰の手ぬぐいをかぶって帰る話でした。
今回は、第一次指導です。筆録を担当されたのは、笠原昭司先生。当時37歳でした。

       第48回国語教壇修養会 於 青森県百石町立百石小学校 
昭和39年12月29、30日 第一次指導(第一時)12月29日(10:10~10:50)

一 よむ

〇 区画 8区画
〇 読む 8人
  1から6まで ゆっくりした落ち着いた読み。
  7 男 明け方ですの読みを教えられる。弱い読み。8 女 声にはりがない。
 ◦ 本をおいて下さい。えらい。8人ともよい読みでしたね。
  なか(内容)のことをよく考えながら、よく読んでくれましたね。
   聞く方も、さすがは三年生だ。とても一生懸命聞いたね。

二 とく

〇 題かさじぞう と題目板書 )
 ◦ 笠地蔵のお話ですね。
 ◦ この地蔵さんは、何で作った地蔵さんでしょう?        (石で作った地蔵さん)
 ◦ 石で作った地蔵さんです。この地蔵さん、どこに立っているか?    (とうげの上)
 ◦ とうげのその道ばたに、石のお地蔵さんがいくつ立っていたか。    (12)
 ◦ 石の地蔵さんが、道ばたに立っているのは、おかしいか、おかしくないか? (おかしい)
 ◦ そうかな。ちがうだろう。外に立っていなさるの、お地蔵さんの役目です。
  雨の日でも風の日でも雪の日でも、どんな日でも、お地蔵さんは道ばたに立っているのだよ。
 ◦ その石のお地蔵さんに、笠をかぶせたのはだれ?           (おじいさん)
 ◦ おじいさんです。どんな日に、かぶせましたか?       (雪のふっている日です)
 ◦ あとからあとから、雪のふってくる日に、お地蔵さんに笠をかぶせてあげました。
 ◦ かぶせている絵のところあるでしょう。あけなさい。
◎ ひびき(絵)
 ◦ 笠をかぶせてあげる前には、お地蔵さんは、何をかぶっていたかな。 (雪)
 ◦ おじいさんが、雪をはらって、笠をかぶせてあげたの。
  こう雪をはらって(動作)ここからとってかぶせ(手で笠をとる動作)また、
  雪をはらって、笠をかぶせてあげたの。
 ◦ お地蔵さまの数だけ、笠があったかな。              (なかった)
 ◦ こう、かぶせていって、(順番に)何番目でとまったか?      (11番目)
 ◦ 11番目になったら、こう(後へ手をやられて)手をやっても、笠はないのだよ。
 ◦ ほかのお地蔵さんは、ちゃんと笠をかぶったからよいが、たったひとりのお地蔵さんは、
  やっぱり雪をいっぱいかぶっているの。おじいさんは困ってしまった。困ったなあ。
  困ったとき、うまいこと考えたよ。何を考えたか? (自分の……)※声低く聞こえない。
 ◦ (師、この力の弱い子の答えを大きく取り上げ)ようし、よい答えだったよ。
  自分のをかぶせました。そうしたら1から12番目のお地蔵さんの頭までみんなかぶったの。
 ◦ おじいさんが、お地蔵さんに笠をかぶせたら雪がやんだか?     (やまなかった)
 ◦ お地蔵さんは雪がふっても平気だが、おじいさんは自分の笠もお地蔵さんにあげてしまって、
  雪まみれになってしまうだろう。おじいさんは、どんな顔をして帰ったか?(よろこんで)
 ◦ 喜んで、にこにこして帰りました。お地蔵さんに、笠をみんなあげてしまって、自分は雪の中
をにこにこしながら帰ってきました。そういうおじいさんの話だよ。
〇 手引き
 ◦ おじいさんは何をしたか、みつけて書きなさい。

三 よむ
四 かく
五 よむ
 (指黙読) (指音読)

六 とく
 ◦ おじいさんが家を出るときは、せなかに何を持っていたの?         (笠)
 ◦ いくつ持っていったのか?     (11。 答を受けて黄チョークで11と板書)
 ◦ 11の笠を持ってでかけました。 (板書 第 6 区画 帰っていきました を指して)
  家に帰った時は、笠、いくつ持って帰りましたか?    (何も持って帰らない)
 ◦ 家を出る時は、笠を11持っていきました。帰った時は笠がゼロです。 
               (黄色で、帰っていきました の左わきに を書かれる)
 ◦ もう1つなくなったものがあったでしょう。         (かぶっていた笠)
 ◦ 自分のかぶっていた笠もお地蔵さまにかぶせてきました。出かける時は、笠を11しょって、
  頭に1つかぶって行ったのが帰りはゼロ。
 ◦ 11の笠は、どこにとんでいったの?              (お地蔵さま)                                                      
      (第3区画に書いた数字11のところから矢印を第4区画のところに書かれ)
 ◦ ここの一つの笠は、どこにいったの?       (お地蔵さまにかぶせました)
 ◦ お地蔵さまにかぶせました。            (前と同様矢印をつけられる)
 ◦ 雪の降る中で、笠がいるのは、石のお地蔵さまか、人間のおじいさんか?(お地蔵さま)
 ◦ そうかな、お地蔵さまが、笠                  (おじいさん)
 ◦ おじいさんだよ。人間のおじいさんが、いるの。
  お地蔵さんは、雨がふっても風がふいても、道ばたに立っているのがお仕事。笠なんかいらな
い。笠がいるのは、人間のおじいさんだよ。それを、みんなかぶせて帰ってきた。
 ◦ 帰ってきた時、おじいさんはとてもよい顔をしていた。おばあさんは、どうだった?
                               (にこにこしていた)
 ◦ 笠が、さっぱりなくなって帰ってきても、おばあさんは、にこにこして迎えました。
 ◦ おじいさんやおばあさんは、お地蔵さまに、笠をくれるぐらい物持ちかな。
  たくさん持っているのか?                   (持っていない)
 ◦ 持っていないさ。笠を作るのは、何のため?           (もちを買うため)
 ◦ もちを買いたいから、作って売りに出かけたの。
  その笠を、お地蔵さんにあげて、にこにこして帰ってきたおじいさん。そして何も持たないで
帰ってきたおじいさんを、にこにこして迎えたおばあさんを勉強します。

七 よむ   板書を読む。

 鈴木先生の御教壇は、おじいさんの地蔵様への思いやりの気持ちが強く感じられます。本当に笠
が必要なのは自分なのに、我が身を顧みず、地蔵様へ笠をかぶせて帰ってくるおじいさん。それを
にこにこして迎えるおばあさん。笠原先生は、これを「若いころに亡くした我が子の姿に重ねてい
るのではないか」と読まれています。
 次回は、鈴木先生の御教壇の第二次指導を紹介します。
          ※著作権の関係で教材文を掲載できません。ご賢察ください。