7月の話題 2

どの子も育つ(順繰り読み)2

 2年生を担任した時、大阪からA児(女)が転入しました。大阪弁で育ったA児にとって、歯切れ良く語調の強い浜田の言葉(石見弁)には抵抗があったと思います。元来大人しく内気な子どものようでしたから、新しい土地や学校生活にどれだけ不安を抱えていたことか。
 国語の時間、順繰り読みでA児の番になりました。立つことは立ちましたが、声が出ません。今にも泣き出しそうな顔で私を見る姿がいじらしくもあります。他の子たちも心配そうです。
「大丈夫よ。先生が代わりに読むから聞いていてね。」
これが当分続きました。そしてある日、ついに読んだのです。思わず涙が出ました。(授業中の涙は禁物です。)聞いていた子どもたちから拍手が起きました。
 人前で一人で声を出して読むことが、子どもにとってどれだけ勇気と覚悟を必要とするかをA児から学びました。A児は自分と闘って、一つの山を乗り越えたのです。
 教式で育ったのは、A児だけでなく、他の子どもたちもでした。そして、私も育てられたのです。
      担 当  島根 M.N