入門期の教式
杉 田 す ま
国語の学習を、私どもは『七変化の教式』(芦田恵之助の指導法)として教えて頂きましたが、入門期に限って五変化となります。教え込むのではなく、子どもの動きに応じて、「読む・書く」ことの楽しさや喜びを味わせていくのです。
杉田先生の教えから学んだことを下に記します。 東京 T.k
一 み る
- 最初の授業では、教科書とノートに鉛筆一本挟んで机の真ん中に出させます。
- そろったところで改めて挨拶をします。あいさつの仕方も教えます。
- それから、毎時間、子供の目を一人ひとり見ます。アイコンタクトをとります。その間、静かに待つよう指示し、終わったら評価を加えます。
- 記名を確認して、教科書の表紙に折り目をつけることから始めます。裏表紙にも折り目をつけます。中も広げやすいように折り目をつけます。
- 準備が終わったところで、表紙を見させます。絵を見ていろいろ話し合います。この時に、挙手と指名と答え方を一緒に指導します。
- 次に、視点を決めて教科書を順に見ていきます。(日によって視点を変えながら見させていきます。)
- 教科書の中ほど(日によって最後))まで見させたら、今日の学習のページに戻ります。
二 こ と ば の け い こ
- 最初は、表紙の言葉「こくご」でもよい。その言葉の発音練習をします。担任は、大げさに口を開いて口形を見せます。
- 大きく口を開けること、声をしっかり出すことを主眼に全員で言ったり、男女別に言わせたり、列ごとに言わせたりします。
- 文字の稽古ではありません。言葉の稽古です。言葉と文字を結びつける準備です。
三 か く
- 言葉の稽古でしっかり声が出たところで、その言葉を文字で書くことを話します。ノートの使い方を指導します。
- 最初の一週間は、自由帳を使って書かせてもよい。枠にとらわれないで書かせてみるのです。
- 教科書を見て書かせます。まず、各自の持っている力で挑戦させます。書き終わったら静かに待たせます。
- 担任はゆっくり板書後、机間指導に回ります。細かな注意は控えます。実態をつかむのも大事な任務です。
- 書き終えたのを見計らって、担任が書いて見せます。しっかりと見させます。
- 体を開いて、どの子にも見えるように注意してゆっくり書きます。一画一画説明しながら書いていきます。
- もう一度、子供に書かせます。先ほどの机間指導で確認した個別指導の必要な子を重点的に回ります。
四 よ む
- 書き終わったら教科書と鉛筆を挟んだノートを重ねて机の中にしまいます。
- 揃ったところで、手を膝にして腰を立てさせます。
- 先ず、担任の鞭に合わせて黙読します。担任は、大きく口を動かしながら鞭を動かします。指黙読を1回やります。
- その時に、単語で書いてあっても句点指導をします。鞭で黒板を軽く押さえて音を出しながら口を強く閉じて見せます。
- 次に指音読に移ります。大きな声で読みます。だんだん声もそろえるようにしていきます。
- 全体で読んだり、列ごとに読んだり、何回か読ませます。指黙読での句点指導にも注意して口を閉じるようにします。
五 と く
- ここは、文字に親しませるための工夫の時間です。
- 例えば、「こくご」と書かせたならば、黒板には こくご こくご と2回かいてありますので、「だよ」と書き加えてみます。黙って見させます。
- 「こくご。 こくごだよ。」と板書を読んで聞かせます。それから、みんなで音読して終わります。黒板を消しながら暗唱させることもします。
詳しくは、第138回 国語教壇修養会で発行した「教式の話」p114~123をお読みください。
芦田恵之助先生没後70年記念「教式の話」 ー国語科指導の単純形態を求めてー
いずみ会事務局にて一部千円で頒布しています。