5月の話題 3

      「記述・自己批正

 ○ 記述は書き浸る時間
 「文話」「文題発表」と進んで、書きたいという気持ちが盛り上がったところで、「記述」に入ります。ここが作文の授業で最も大事な時間です。鈴木佑治先生は、「入学以来の全力がことごとくその一点に集中し、一心に書き浸る楽しみというものを、子どもたちに十分に味わわせねばなりません。」と言われました。
 そのために教師が何をすればよいのか。工夫に工夫を重ねて芦田先生がたどり着いたのが、教卓の脇にじっと立っているという方法です。

 ○ 原稿用紙
 2年生の子どもたちは、原稿用紙に書くのが初めてでした。2年目の授業で、原稿用紙に書くのは初めてと言われて驚きました。そういえば1年目にも、原稿用紙の使い方を確かめに来る子どもたちが続出でした。
 教科書を見ると、句読点やかぎ括弧等の記述はありますが、原稿用紙の使い方は載っていません。子どもたちが書くことに集中できるように、現場の状況をよく確かめるべきだったと反省しました。

 ○ 教師は沢庵石
 記述の時、教師は教卓の脇に立っているだけでよいのです。それを「沢庵石」と教わりました。
 じっと立っているだけのように見えるので、記述の時の教師の様子が筆録に残されることは少ないようです。しかし、滝野川第一小学校における芦田先生の立ち居振る舞いが、青山氏による筆録に残されています。また、芦田先生がお書きになった「私の綴方教育観」という文章にも、記述中の教師の態度について、示唆に富むことが書かれています。
 芦田全集の第6巻に記載されていますので、ぜひお読みください。

 ○ 記述と自己批正は一体
 児童は、原稿用紙に向かって書きながら、同時に自己批正も進めます。書いては考え、考えては書き直しながら、作文を書き進めます。書き終えて読み返すと、また気付くことがあり、付け加えたり削ったりして仕上げて行きます。
 発表してくれた題のほかにどういう題で書いているのだろう……、あの子はなかなか書き進められないようだけれども……、そんなことを考えながら児童の様子を見て立っていると、沢庵石も意外と面白いものです。
 昭和9年、小樽市立緑小学校の沖垣校長先生は、芦田先生の記述の時間における児童の姿を見て「純粋な自学の世界」と書いておられます。そういう時間にしたいものです。

                                岩手 Masa.K