今月は、笠原昭司先生の「入門期の指導」に関する話題を提供いたします。
笠原昭司先生が、宮沢小学校(宮城県古川市)の校長室で昭和62年4月25日(土)に話された講話、並びにその後頂戴した資料を4回に分けて紹介します。
入門期の教科書の歴史(宮沢小学校での講話 その1)
入門期の教科書には歴史があり、それぞれの時代の特徴がある。
(複製本を示されて)これは白表紙本、この前に黒表紙本がある。黒表紙本は複製でも手に入らない。
白表紙本は、いきなり単語から入っている。「ワードメソッド」というやつ。「ハナ・ハト・マメ・マス・ミノ・カサ」というように単語から入る。ところが、その前の黒表紙本は「イ・エ・ス・シ」と文字から入っている。
文字から入って単語に入って文章に入って行くやり方が長い間考えられてきたけれど、「イ・エ・ス・シ」で教えていくと、子どもたちはさっぱり面白がらない。白表紙本になって単語から入るようになった。単語から入るために「サクラ」なら桜の枝を持ってきて見せて、次の単語が出てきたらそれを見せてというようなことで、その頃の先生方は、一時間厭きさせないで続けるのに苦労したらしい。
それを180度転換して、文章から単語、単語から文字へと、文章が先の所謂「センテンスメソッド」になってきた。それがこの教科書(サクラ読本)で始められた。昭和8年に作られた画期的な本で、「コペルニクス的転換の教科書」と言われ、教科書では最高のものとなっている。
この読本は、日本中にセンセーションを巻き起こした。色刷りで綺麗だし、文章も一番吟味されている。6年かかって12冊の教科書となり、昭和16年まで約10年間使われた。編纂者は井上赳さんで、文部省から満州建国大学に行き、満州国の子どもの読本を作った。
次に国民学校になって、「ヨミカタ」という本になった。読んでみると、なんとなく日本が二進も三進も行かなくなった時代で、敗戦に向かう焦りが見えてくる。挿し絵も殺伐となり、所々につまらない文章が入っている気がする。
このように入門期の教科書は、その時代の特徴があり面白い。
宮城 T・S
参考文献 「教科書の社会史」中村紀久二 著 岩波新書233
国定教科書の使用世代 131頁 「表2 国語教科書とその使用世代」
