5月の話題 2

杉田すま先生「入門期の教式、一みる」に学ぶ

 「一みる」は、絵を見て問答するところです。問答ですから、問いをしっかり聞く、発言の約束を守るということがあります。腰を立て、指示をよく聞いて考える、そして、答える時は挙手をして、指名されてから言うという約束をします。

 そのための声がけが、指導の流れの中に細かく組み込まれています。杉田先生のすごさは、それを入学の日から徹底的に行うことです。これが生活の規律を生み、相手への思いやりを育むと言っておられます。

 こと教材に対しては、絵だけであっても、いろいろな方向から読み解き、同じことが重ならないように、聞くに足るだけの内容を考える。そして、子どもたちの知識、概念、生活経験を整理していくというものです。それぞれの内容の一つ一つが考え抜かれているのだなあと思います。

 中でも、この心のくだき方が素晴らしいなあと思ったことを紹介いたします。それは、子どもの答えの受け取り方です。

 「真剣に気持ちよく受け取る。その意見が皆に行き渡るように、先生がもう一遍言う。その時、不足があれば補ってあげる。」

 すごさはこれの続きです。

 「問いとくい違っても、ちがうとそっ気なく切り捨てるのでなく、『惜しいなあ』『そう考えたか』と答えを尊重して受け取るというのです。杉田先生のみならず、芦田教式の授業に一貫している接し方です。

 こういう取り扱いをしてもらうと、子どもは安心して発言できます。勇気を出して発表したことを大切に扱ってもらうことは、子どもの大きな安心となり、次の発表への意欲になることでしょう。

 でも、この扱いにはもう一つ大切な意味があると思うのです。これは、子どもの真意がどこにあるかという確認でもあると思うのです。子どもの真意を図りかねては、問答は空回りとなり子どもの納得を得ることは難しいでしょう。子どもの声を真剣に聞き、子どもの真意を慮る、これが問答の基本にあるべき姿という教えなのだと思います。
         宮城  M.A