9月の話題 3

ど こ ま で 行 っ て も 長 い 道

 まだ三十代だった私は、ときどき、笠原昭司先生のご自宅に伺って教わっていました。石巻の拙宅から岩出山町の笠原先生のお宅まで、同じ宮城県内とはいえ車で1時間半以上かかりました。教えて頂く場合は、当然、自分の案を持っていかなければなりません。たいていは当日まで案が完成しておらず、岩出山町の入り口にある小さなレストランでハンバーグサンドを食べながら、ぎりぎりまで案を見直したり、付け加えたりしておりました。そのせいで約束の時間ぴったりに先生のお宅に入ることが多く、奥様から「いつも時間に正確ね!」とほめていただきました。
 笠原先生は、鈴木佑治先生から落語のレコードを聞かせてもらったことや、川柳を勉強するように言われたことなど話してくださいました。落語は、語り口や間のとり方を学ぶのに役立つだろうと思いましたが、川柳については、季語のない俳句という程度の認識で軽視していたので、正直驚きました。川柳は文章の心をつかむ勉強になると言われ、「誹風柳多留」の文庫本など、何冊か買って読みましたが、難しくて今でも読み解きかねています。
 鈴木先生は、15分で立案されたそうです。一読でピタリと文章の心がつかめるようになるためには、どれほどの修行を重ねればよいのでしょうか。どこまで行っても長い道です。
      宮城県 M・K