12月の話題 1

表現主体の確定

 今月は、庵逧巌著「国語科教育学の性格」(明治図書 1981年刊)の中から
 ー 芦田恵之助研究序説(一) ー を4回に分けて紹介します。

 芦田が最も信頼を寄せていた若き同志の一人岩瀬法雲氏が、かつて、この教材に対する自らの工夫を報告して、「おもしろい」と師にほめられたことを明らかにされている。
「サイタ サイタ サクラガサイタて、この子は誰に言っているの、と聞いたら、『カアチャン』『ネエチャン』『バアチャン』と口々に賑やかなことになった。そこで、私は、それをそれぞれの相手に知らせてあげてごらん、と言ったら、教室は相手を呼んで知らせる叫び声に一頻り沸いた。そこで、私は、『このサクラは昨日まではどうだったの。』と聞いてみたら、『咲いていない』と来た。そこで、私は、『待っていたのが咲いていて、うれしかったのだね。だから、サイタ サイタ サクラがサイタと、言って知らせてやろうとしたのだ。』とまとめた。」
 ここでは、表現主体は、単に客観的なさしえの下にかくれている花見の人々であるのに止まらず、理解主体である子どもの心情と一致して、一転子どもたちは自らを表現主体として身近な母や姉に呼びかけるにいたる。さらに、完了の助動詞「タ」に着目したところなど、まさに出藍の誉れとして芦田が認めたゆえんであろう。      p239
         
庵逧あんざこ いわお 先生の紹介
 昭和 5年2月 兵庫県 誕生
 昭和47年4月 山梨大学助教授
 昭和54年2月 逝去
 私は、助松太三先生が、東京いずみ会で庵逧先生のことをお話されていたことを思い出します。
 助松先生も庵逧先生の芦田先生研究に期待をされておられました。
 若くしてお亡くなりになられたことを悲しんでおられました。
        東京  T.K

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